10月の終わりに思うこと
冬の夜のベランダに立っていると、高速バスのバス停の空気を思い出す。
まだ日も出ていない早朝に、母親に近くのコンビニまで送ってもらって、そこから歩いて階段を上って、蛍光灯で白く照らされたベンチに座って、リュックサックは膝において、さっきコンビニで買ったあったかいミルクティーを飲みながらバスが来るのを待っている時の息の白さ。
初めてライブに行くから、グッズが売り切れるのが怖くて、販売は午後1時からなんだけど朝の9時には着くようにめちゃくちゃ早起きしたんだっけ。
車の中から見た、朝靄で霞んだ月がきれいだったこと、今もまだ覚えているよ。
車窓からの景色って思い出になることが多いと思う。
ライブの帰り、高速バスの窓から見えたオリオン座が大きくて驚いたこと。あんなに大きなオリオン座を見たのはあれが最初で最後だった。帰りにファミレスで食べたカレードリアの味と一緒に覚えてる。
窓に付いた雨粒のせいで赤や黄色の街の明かりがキラキラ光って眩しかった夜のこと。冬だった。学校に行けなくて遠くの図書館で一日中時間を潰した日の帰りのバス。今でもたまにあの夜のバスに乗りたくなる。
小さな家出をした夜、迎えに来た母の車に乗ってぼーっと眺めた真っ暗な田んぼ。チャゲアスの曲が流れてた。夏だったから、窓から入る風が涼しくて、涙の跡がひんやりしたこと。
忘れたくない。